朝日新聞のWEB版に、笑福亭伯鶴師の事故を検証する記事があった。
紙面の新聞記事としては、大阪本社版12月5日夕刊に出たらしい。
以下、少々長くなるが記事全文を引用。
記事には写真や図もあったが、それらは省略する。
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全盲の落語家はなぜ電車に接触したのか? 内方線とは
1日午後11時ごろ、大阪市淀川区三国本町3丁目の阪急宝塚線三国駅ホームで、全盲の落語家笑福亭伯鶴(はっかく)さん(51)=本名・丹羽(にわ)透、同市淀川区=が、梅田発雲雀丘(ひばりがおか)花屋敷行きの普通電車(8両編成)に接触した。淀川署によると、頭を強く打つなどして意識不明の重体。【12月2日付朝日新聞夕刊から】
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「いつもより1、2両前すぎますわ」
2両目に乗っていた伯鶴さんは、一緒にいた落語作家の男性(59)にそう話した。いつもは4両目付近に乗っている。自宅最寄りの三国駅では、改札に通じるエスカレーターに一番近いからだ。
「後ろに行きますか」と男性が尋ねると、伯鶴さんは「慣れてるから大丈夫」と答えたという。
上方落語の定席「天満天神繁昌(はんじょう)亭」での寄席が8日に控えていた。この日は打ち合わせを兼ね、男性らと計3人で大阪・梅田で会食した帰りだったという。
淀川署によると、伯鶴さんは下車した後、白いつえを持ってエスカレーターのある南の方に歩いたが、突然向きを変え、北側のホーム先端に向けて点字ブロックの上を歩き出した。電車が動き出した直後、線路側へずれて車両へ近づいていき、電車に接触。ホームと車両の間に体の一部を挟まれたような状態のまま、約15メートル引きずられていったという。
駅によっては、点字ブロックの横に、どちらがホームの内側かを示す凸型の線「内方(ないほう)線」を敷設しているが、三国駅にはなかった。ホームに駅員はおらず、車掌も運転士も事故には気付かなかったといい、電車はそのまま走り去ったという。
落語作家の男性は「とても慎重な人なのに。方向を見失ってしまったのかもしれません」と話す。
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妻の丹羽智香さん(43)らによると、東大阪市出身の伯鶴さんは生まれながらの全盲で、幼い頃から祖父に連れられて寄席に通っていた。故・六代目笑福亭松鶴の落語が好きで、中学生の頃には「あのオモロイおっちゃんの弟子になる」と決め、府立盲学校高等部を卒業した75年に入門。同門の笑福亭円笑(えんしょう)さん(68)は「けいこ熱心で、兄弟子の故・笑福亭松葉(七代目松鶴を追贈)宅に通い続けていた」と話す。
古典のほか、人権や障害者問題を織り込んだ落語にも取り組み、大阪市西区の盲人情報文化センターで定期的に落語会を開催。95年の阪神大震災後には「笑うことで元気が取り戻せたら」と被災地の小学校で復興寄席を開いた。ミュージシャンなど異分野の人との共演にも意欲的で、「繁昌亭」では新作落語を披露しているという。
智香さんによると、伯鶴さんの容体は回復に向かっているという。
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「私たちは柱や荷物にぶつかった拍子などに、すぐ方向が分からなくなってしまう」。視覚障害がある大阪市の谷口由里子さん(40)は言う。
国土交通省によると07年度、ホーム上で列車と接触したことによる人身事故は全国で131件、転落事故は65件あった。うち視覚障害者によるものは2件で、いずれも転落事故だった。事故防止に有効とされているのは、ホームと線路を仕切り、電車の到着に合わせて開く「ホームドア」や「可動さく」だ。
06年12月施行のバリアフリー新法に基づく国土交通省令で、「停車するすべての列車の扉の位置が同じ」などの条件に合う新設駅には、ホームドアや可動さくの設置義務がある。国交省によると、車両の種類が多いことなどから、近畿圏で設置されているのは新幹線では新神戸駅だけ。在来線では京都市営地下鉄東西線や大阪市営ニュートラム南港ポートタウン線、神戸新交通ポートアイランド線(ポートライナー)など5線56駅で、大手私鉄やJRの駅にはない。全国でも駅全体の約4%に過ぎない(11月末現在)。
阪急電鉄では全85駅のうち14駅に内方線が敷設されているが、法的義務はなく、三国駅にはなかった。障害者を支援するNPO「中部障害者解放センター」(大阪市)の石田義典事務局長は、「伯鶴さんは線路側をホーム内側と勘違いした可能性もある。ホームドア設置までの暫定措置として、できるだけ多くの駅に内方線を追加するべきではないか」と話す。(藤田さつき、後藤洋平)
(asahi.com 2008年12月6日)
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最近少しずつ増えているような気もするが、内方線という名前はまだ聞き慣れない。
駅のホーム上では、この線状の突起は点字ブロック(警告ブロック)よりも触覚的なインパクトが大きいようで、むしろこの線に白杖を沿わせて歩くほうが楽に移動できるという人もいる。
記事中のホームドアや可動さくは、駅ホームからの転落を防止するための最終的な解決策に近いものだ。
ただし、これらはすべての駅のすべてのホームに設置可能というわけではない。
現状では、次善の策としての内方線の果たす役割は大きいだろう。
伯鶴師の容体は回復に向かっているという。
せめてもの救いである。《参照・リンク》
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